まだ「フランス菓子」という言葉が、
日本ではあまりなじみがなかった20年以上前…
赤いイチゴが映える真っ白な生クリームに、
きめ細やかなスポンジ。
ケーキといえば、みんなが真っ先に思い浮かべるのが「イチゴショート」。
当時、駆け出しの菓子職人だった椿原シェフが、
「生クリームとスポンジの組み合わせだけが、ケーキではない。
たくさんの種類の中から‟お気に入り”を見つける楽しさを知ってほしい」
という想いで、生まれ故郷の山間のちいさな町・今立ではじめた、
洋菓子店『ESPOIR(エスポワール)』。
扉を開けた瞬間、厨房からの‟おいしい香り”に包まれる店内。
ショーケースには、季節に合わせてラインナップは少し変わるものの、
オペラやサヴァラン、ミルフィーユ、シブースト、モンブラン、エクレール、
ボンボンショコラ、オランジェット、マカロンなどなど、
菓子職人の想いが詰まった、個性あふれるスイーツが整然と並んでいます。
気張らずに楽しく、お菓子本来の喜びに出会えるよう、
厳選素材を使っていても価格は控えめ。
このお店なら慣れない人も気後れすることなく、フランス菓子の扉を開けられると、
少しずつファンを増やしていきました。
「おいしいお菓子」をストイックに追求しつづけた20代。
「どんなお菓子がお客様に受入れられるか」、検証しはじめた30代。
そして40代にさしかかり、
「自分のつくりたいお菓子だけではなく、
地域に寄りそうものでありたい」と、地元の食文化や風土に合う、
あたらしい魅力をまとわせたものに少しずつ変化していきます。
クラシックなフランス菓子の基本を大切にしながら、
地元の食材や柑橘など和の素材を加えたり、料理の手法をとりいれたり、
季節によって脂肪分の異なる生クリームの配合を変えながらコクを深めたり。
自由なスタンスで、この土地ならではの「おいしさ」と向き合う、
シェフのあくなき探求心が、いつしか、
ふくい人の舌にすっとなじむお菓子へと進化していきました。
日本各地、水や風土が違えば、そこに住む人の好みも違うもの。
「マカロン」が、フランスの各地方によって見た目も、味わいも違うように、
日本の洋菓子店も、東京発信の一辺倒のものではなく、
各地域のカラーがあれば、もっとおもしろくなるはず。
エスポワールは、ふくいのお客様がいつでも「おいしい」と感じるもの、
そして県外や海外から訪れたお客様にとって、
驚きと、あたらしい発見がある唯一無二のお菓子を、
これからも、まじめに、ていねいにつくり続けていきます。